2006/12/6 「第8回神奈川県神経免疫フォーラム」特別講演報告

■難治性CIDPにおける治療戦略(獨協医科大学神経内科講師 小鷹昌明)

 小鷹昌明先生(獨協医科大学神経内科講師)による上記標題の特別講演が行われました。獨協医科大学神経内科は、結城伸泰先生を中心としてGBS・CIDPの臨床と研究が最も行われている医療機関の一つです。ステロイドで寛解を維持できず、頻繁にIVIgを必要とする難治性CIDPに対して、免疫抑制剤シクロスポリン(商品名ネオーラル)の有効性が確認され、CIDPへの保険適応に向けて臨床研究が開始されたというニュースがありました。今後、さらに症例数を積み重ねる必要がありますが、これに基づきCIDP治療指針の暫定案が紹介されました。

〔講演要旨〕 CIDPは、症例ごとに経過や治療への反応性が異なることから、複数の異なる疾患を含む不均一な症候群と考えられている。治療の第一選択は、簡便性、即効性の点で優れているIVIgであるが、この治療だけでは異常な免疫応答を終息させることはできず、多くの場合効果は一過性であり、再燃する。そのため副腎皮質ステロイド薬の併用が、寛解を維持するための治療として理にかなった選択肢の一つである。しかし、ステロイドを使っても寛解を維持できず、繰り返しIVIgを必要とするCIDPがある。このような患者に対し、シクロスポリン(ネオーラル)を導入することにより、IVIgの反復投与回数(再燃回数)が減少し、寛解を維持することができた。

・初期投与量として3r/kg/日、トラフ値(血中濃度)を100−150ng/mlに調節する。すぐには効果が発現しないので、少なくとも6ヶ月は使ってみる。効果がみられれば1年間継続し、その後6ヶ月毎に20%ずつ減量していく。7r/kg/日を超えると腎毒性が強くなるので、効果が不十分で増量したとしても4−5r/kg/日までとする。
・ CIDP30症例のうち、ステロイドを十分に使ったにも関わらず寛解が維持できなかった14症例に、シロスポリンを試みた。10例に効果があり再燃回数が減少した。3例は副作用により中止、1例は無効であった。
・シクロスポリンは、臓器移植後の免疫抑制剤として広く使われているが、免疫抑制の結果、悪性腫瘍のほか腎機能障害(注)、易感染性などが考えられるので、言うまでもなく定期的な検査をきちんと行う。(注)クレアチニン値が通常値より30%上昇した場合、1ヶ月中止し、通常値に回復したら再開する方針をとる。
・シクロスポリンのCIDPに対する保険適応に向けて、信州大学の池田修一先生を研究代表とする医師主導型の臨床研究が開始された。今後、症例数を積み重ねていく必要がある。

〔備考〕ステロイドと免疫抑制剤を併用するか、免疫抑制剤の単独使用とするか、について会場内より質問が出された。小鷹先生のグループではステロイド漸減中に再燃した場合、服用中のステロイドの増量はせずにシクロスポリンを加え、最終的にはシクロスポリンの単独使用に切り替える方針をとっているが、これについても今後、症例数と研究を重ねていく必要がある。

!注意! 上記は、暫定的な研究報告の一つであることをご承知おきください。症状の程度や治療への反応性は一人ひとり異なります。具体的なことは、必ず主治医とご相談ください。
                               
監修:小鷹昌明(獨協医科大学神経内科講師) 文章:マッシュルーム(2007/2/17記)