<難病患者のための就労支援シンポジウム参加報告>
事務局 辻

2007年1月21日(日)、東京都難病相談支援センターの主催により、同センターにて難病患者の就労支援に向けてのシンポジウムが開催されました。

当日のシンポジストは、
東京都難病相談支援センター 
難病相談支援員 笠井 秀子 先生
東京労働局職業安定部職業対策課障害者雇用対策係 
係長 根岸 栄子 先生
独立行政法人 高齢・障害者雇用支援機構 東京障害者職業センター
 次長 宮崎 哲治 先生
東京都産業労働局雇用就業部 就業推進課 
障害者就業担当係長 馬場 栄一 先生
内部障害者厚生施設 東京都清瀬園
福祉係長 木嶋 太 先生
千代田区障害者就労支援センター
 大杉 利裕 先生
株式会社 スタッフサービス・ビジネスサポート 
取締役、障がい者職業生活相談員 小野 博也 先生
の7名です。患者側の出席は約50名でした。

今回のシンポジウムの趣旨は、事業者に対して法律で定められている障害者雇用枠の中には、手帳を持っていない難病者は含まれない、という厳然たる事実と実態の中で、@現実に障害者の就業に関係する各機関で、難病者に対して何が出来るのか、A実際の企業等での取り組みとしてどんなことが行われているのか。B難病患者は今、何が利用できるのか。Bそしてそれぞれが、今後どのような方向性を持って進んでいけばよいのか、どんな取り
組みや働きかけが必要なのか、を探るシンポジウムとなりました

当グループからも、パーキンソン病や膠原病その他多くの難病患者の参加者に混じり、事務局2名と、都内在住のFさん、埼玉在住のOさん、計4名で参加しました。それぞれ、就業中である身のもの(2名)、就業中の患者を抱える家族として、また今後就業を迎えるお子さんの親としての出席です。
以下、シンポジウムの進行とそれぞれの発言の要旨や結論を申し上げます

難病相談支援センター笠井先生から、就労相談の実態についての報告
(東京都難病相談支援センター難病相談支援員 笠井先生)

現在の実態として、相談件数年間1万件のうち、経済・仕事・学業に関する情報不足不安による相談件数は約4−5%あるそうです。

実際に明らかな就労相談86件の中身は下記のとおりです

相談者 本人88%、家族11% 関係機関2%
性別 男性57% 女性41% 他は不明
年齢構成20代14%、30台26%、40台24%、50台13%、60台2% 不詳20%
相談時の就労状況は 未就労44% 就労中18% 休職中37% 不詳1%
身体障害者手帳の交付は あり17% なし69% 不詳14%
病状 安定38% 波がある46% 進行中10% 不詳6%
疾患別には 神経系27名、自己免疫系23名 消化器系16名 脊髄骨幹系5名 循環器系3名 血液系2名 眼科系2名 ・・・
未就労者の相談内容としては
1位 雇用者に病気を表明する不安
2位 病状管理に関する不安
3位 同病者の就労状況に対する情報不足
4位 就労提供期間の情報不足
5位 難病者の就労支援制度の未整備
6位 就労先の紹介
7位 職業と勤務条件選択に関する不安
8位 経済的理由による就職希望
9位 就労に関する不安
10位 就労支援、斡旋機関の難病者への理解不足
11位 就労先が未決定での不安
12位 職場の人間関係に関する不安・困難
13位 本人・家族の就労の意思の不一致   となっているとのことです
就労者の相談内容としては
1位 本人が納得できない勤務形態・待遇の変更
2位 難病者の就労支援制度の未整備
3位 病状管理に対する不安・困難
4位 雇用者に病気を表明することへの不安・困難
5位 経済的理由による離職困難
6位 同病者の就労状況に関する情報不足
7位 職場の人間関係に関する不安・困難
8位 本人が納得の出来ない契約の破棄  となっているとのことです
まとめとして
・ 相談者は本人からが多く、年齢層は幅広い
・ 相談対象者は未就労および休職中が81%であり、就労意欲や能力があるにもかかわらず就労が制限されている実態が示唆された
・ 障害者手帳を有しているのは16.7%であり、多くの難病者は障害者雇用促進法には該当しない
・ 病状が安定しているものは38%で、その他は病状に波があったり進行している状態のため、就労に当たっては病状管理のあり方が重要なポイントになる
今後、難病相談支援センターにおいては、就労支援のあり方として
・ 難病療養者の就労実態の把握の必要性と課題整理
・ 就労支援期間や同・ 病者の就労状況等の情報提供→就労支援期間とのネットワークの構築
・ 療養者自身に対する病状管理等の相談機能の充実 以上が挙げられました。
 
<私見>
難病相談センターの分析は、難病療養者のわれわれが普段感じている不安感を比較的正確に捉えているのではないかと感じました。また、センター側から指摘されたような患者側から見た未整備の実態が、支援機関側からの発表で図らずもこのあとあらわになっていきました。
就労中の患者からの相談件数が少ない(18%)点については、現実の就業上での問題をまず会社や上司等と相談するケースが多く、そこで解決を張っていく、あるいは我慢している患者さんが多いのかなと思いました

ハローワークにおける障害者支援の現状と活用についての報告
(東京労働局職業安定部、根岸先生)

まず、障害者の就職数ですが、ここ5年間で、身体障害者で37%増(H17就業者数は3974名)、知的障害者で45%増(同2414名)、精神障害者で184%増(同515名)と、得に著しく精神障害者の雇用が進んでいます
全国の状況では、障害者の雇用率全体ではここ10年横ばいの傾向だそうですが(1.52%)、平成4年に企業への給付金が4万円から5万円に引き上げられ、企業名が公表されるようになったことたこと、平成10年に雇用率が1.6%から1.8%に引き上げられたこと等をきっかけに、最近10年の特徴としては、1000人以上の大企業での雇用率が大きく上がり(10年前に比べ0.6%上昇 1.3→1.9%)、反対に100人未満の企業での雇用率が大きく下がっています(10年前に比べ0.7%下降 2.1→1.4%)。東京都でも同様の傾向です。

ハローワークでは障害者雇用促進の取り組みとして、2つの側面から支援を行っています。ひとつは企業側に対しての雇用率達成指導の強化であり、もうひとつは障害者に対する職業紹介の充実です。
背景として、まず最近では平成10年の法定雇用率の引き上げのほか、精神障害者の短時間労務者への助成適用や、特例子会社の認定要件の緩和、平成18年にはさらに、精神障害者に対する雇用対策が強化(雇用率への算定対象化、短時間労働者の0.5人としてカウント)され、在宅就業障害者に対しても企業への特例報奨金などが支払われることになったことなどがあります。
これらのなかで近年、障害者福祉施策との有機的連携や市域障害者就労支援事業を強化しています。また、本来的な就労支援として、障害者専門の相談窓口を設置したり、職業センターや就労支援機関と連携したり、同行紹介等も実施するほか、企業に対して厳正な指導のほかに面接会の開催や障害者雇用支援プロジェクト委員会の設置など企業への支援も実施されています。このように障害者手帳を持っている方への就労支援・援助は、近年、大変充実してきました。

一方、難病者(手帳なし)に対しては、まず相談窓口は、難病者ということをハローワーク職員にオープンにする場合、専門援助部門として障害者の専門窓口がつかえるとのことです(専用ではない)。職業紹介の場合は、企業に対して難病を告知しない場合は、配慮も支援メニューも受けられないとのことです。難病を職員にもクローズにする場合は、窓口も紹介も一般と異なりません。なお、実態として、難病者ということをオープンにするかしないかは、どちらにもそれぞれメリット、デメリットがあるのは事実です。
また、障害者に対する委託訓練ですが、知識技能訓練コース、実践技能習得コースの2つがありますが、難病者や発達障害者に利用が可能ということになっていますが、実際の利用は少なく、使えない制度も多いとのことです。
たとえばトライアル雇用事業(会社の試用期間のようなもの)として上記のコースを企業が利用する場合もあるのですが、難病者や発達障害者は、これによって雇用しても法定雇用率には参入されないため、利用は可能でも企業側にとって意味がないということになります。

<私見>
難病者はハローワークでの「専門援助部門」を利用することは出来るが、あくまでも法定雇用率の達成を目標としている部門である。
利用可能とはいえ雇用率達成目標の対象外の難病者に対してどこまで真剣に対応してもらえるか疑問であり、各ハローワークやそれこそ対応者によって、その差がかなり生じるのではないかと感じました。

(3)障害者職業センターのサービス
   (東京障害者職業センター 宮崎先生)

障害者職業センターからは、職業リハビリテーションの守備範囲、障害者職業センターで提供できるサービス、障害者の範囲と職業リハサービスの関係について報告がありました。

まず職業リハビリテーションとは、ILO(国際労働機関でしたっけ)第99号勧告によれば、連続的総合的なリハビリテーションの一局面であり、障害者が適職を確保し保持できるようにするための援助、ということになります。
具体的な活動としては、職業評価、職業指導、職業準備訓練、職業訓練、職業紹介、保護的雇用、フォローアップ、ということになるそうです。
目的としては、全ての障害者を対象として、@適当な職業に就き、それを継続できるようにすること Aそれにより障害者の社会への統合・再統合を促進すること となります

障害者職業センターで提供している各種サービスは、さまざまなものが説明されましたが、概して今までは就職に向けての活動が主体であったが、今後働き続けるために、または職場復帰に向けての活動も強化していくとのことです。

では肝心の難病者が利用できる職リハサービス(手帳のない場合)ですが、@による就職復職のための職業相談 A職業準備支援(就職に向けた労働習慣の習得等) Bジョブコーチによる支援 C事業主に対する障害者の理解啓発のための専門家による助言、雇用管理サポート、研修 D修飾語の職場定着のための職場適応援助(ハローワーク、障害者職業センター)ということになります。そして今後難病者の職リハのあり方についての研究開発を行っていくとのことです。ただし、就職のチャンスは手帳の有無によって異なるので、取得可能な場合は取得をお勧めしますとのことでした。
また、各メニューについての詳細は、資料は配布されましたが、時間の関係で詳しい説明はありませんでした(また調べてご報告します)。

<私見>
障害者職業センターの上部組織の高齢・障害者雇用支援機構は、難病者を「その他の障害者」として捉えている機関であるため、少し期待していたのだが、最終的な語調は、「手帳を取れる人は取ってください」に終わったような感じを受け、残念な気持ちが残りました。

そこで、今回のシンポジウムの後、難病センターの笠井先生を訪ね、職業センターの宮崎先生に電話で質問しましたので、若干情報を補完させていただきます。
まず、障害者を5名以上雇用する事業所には障害者職業生活相談員が配置されているのですが、高齢・障害者雇用支援機構はその認定テキストを毎年発行しており、その中で、難病者は上記のように障害者の中にその他の障害者の名かのひとつとして位置づけられています。
その中では、@難病者を働けない病人ではなく持病がある労働者として捉えること、A継続的な疾患管理と職業生活両立の社気的支援、B多様な難病への個別的かつ効果的な支援の必要性などが11ページにわたり記述されています(同機構の幕張センター研究員の春名先生(難病やHIV等内部障害者研究を担当)が記述)。
このため、職業センターが、本来的には難病者の相談窓口として機能するものであることを教えていただきました。実際にどのような支援が出来るかは、本人や企業の状況によって違うため一概には言えませんが、当然センターとして企業に物言うことも出来るようです。したがって、「まず相談をしてください」とのことでした。
さらに私見ですが、東京都の場合は、今回のシンポジウムを行ってくれた「難病センター」にまず相談し、適切な機関を一緒に検討するという前段階を踏んでから、各機関に相談に行くのがいいと思いました。
(なおこの障害者職業生活相談員の認定講習会は毎年実施されその都度テキストも改定されるため、すでに以前に認定された相談員の方は、最新のものはもっていない可能性が高いとのことです)

千代田区障害者就労支援センターの事業についての報告(大杉先生)と私見

現実の場で最も多く障害者の力になってくれると思われるのが就労支援センターです。これは東京都の場合、全市区町村に設置されています。相談を受けるだけでなく、障害者とともに企業を訪ねたり、就職の仲立ちをしてくれたり、職業訓練やその後の職場定着ケアも含め、一貫して支援してくれる(とにかく一緒に考えてくれる)機関がこのセンターです。
現状では、手帳を持っている障害者に対する活動が主な活動となるため、難病者は厳密には対象者ではないのですが、今回のシンポジウムを機会に、難病者も積極的に受け入れる方向で検討をするとの大変前向きな発言がありました。

その後の話ですが、難病相談支援センターとの話しあいにより、今後、都内の各就労支援センターの研修会の場または研究会として、難病者を取り上げようということになったようです。これは大変意義深いことで、今後が注目されると思います。難病支援センターも大変期待しているようですし、何より一番身近な機関という感じがしたのも事実です。一方で、都道府県や市区町村によっては、難病者への取り組み姿勢が相当違うのでは(門前払いもありえるか?)、と危惧も感じました。

なお、就労支援センターは福祉の関係であるため、基本的には居住地が基本になります。(一方、障害者職業センターは、労働の関係であり国の機関なので、使いやすいところどこでもよいそうです(居住地、就業地、本社所在地等、また、隣県の施設が近いときはそちらでも対応できるとのことです))。

内部障害者厚生施設 東京都清瀬園、株式会社スタッフサービス・ビジネスサポート の取り組みと現状の報告
 
最後に、障害者の職業訓練を実際に行っている東京都清瀬園、ならびに、スタッフサービスの特例子会社である潟Xタッフサービス・ビジネスサポートの事業や取り組みの詳細が報告されました。潟Xタッフサービス・ビジネスサポートさんからは会社案内をもらいましたので、ご希望の方はコピーをお渡しできます。


以上ながながと報告させていただきましたが、東京都の場合、いずれの場合においても東京都難病相談・支援センターが、まず第一の相談窓口になっていただくことをお約束いただきました。
難病センター側も、そういう実績が今後ひとつでも増えることを期待しているようです。

なお、難病者の就労をめぐる環境や難病相談支援センターの支援体制や考え方については、各地により状況も大きく異なると思います。その中で今回の例もご参考にしていただければ幸いです。ご質問等是非事務局までお待ちしております。


(関係リンク)

難病患者の雇用管理・就労支援に関する実態調査結果(平成18年3月)厚生労働省職業安定局
http://www.koyoerc.or.jp/nanbyo/honbun.pdf

障害者雇用ガイドブックのうち、第3章(「7節その他障害者」に難病者の項あり)
http://www.jeed.or.jp/data/disability/guidebook/download/degb2006-3.pdf